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「――どうして、私があんたにチョコをあげなきゃいけない訳?」
チョコをあげれれば誰でもいいわけじゃない。私だって――。
「そりゃ朝倉さんが俺のこと好きだからに決まってるでしょ」
「っ……!」
当たり前のように倉敷は言った。
「じょーだん! 私がいつあんたのこと好きって言ったのよ!」
「あれ? 違った?」
「違うわよ!」
「そうなの? なーんだ」
そうやって笑う倉敷に、不覚にもドキッとしてしまう。
「でも、俺は好きなんだよね。朝倉さんのこと」
「え……?」
「だからさ、俺にバレンタインチョコ、ちょーだいよ」
事も無げに言うけれど、今とんでもないこと言われた気がする。
現に、向こうの方で女の子たちが凄い目で私を睨んでいる。
「冗談言わないでよね!」
「冗談じゃないよ?」
「冗談に決まってるでしょ! あんたが私を好きなんてある訳ないじゃない!」
説明っぽくなったかもしれない。でも、その言葉が聞こえたのか突き刺さるような視線が少し柔らかくなって気がする。……少しだけど。
「信じてくれないかもしれないけど」
声を抑えて倉敷は言った。
「朝倉さんのチョコが欲しいのは本当だよ」
「っ……!」
「ダメ? 隣の席のよしみでさ」
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