きみのチョコをぼくにちょーだい

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「気が重い……」  カバンの中には昨日の夜に作ったチョコが入っている。結局、あの後いそいそとラッピングまでしてしまった自分がバカみたいだ。  ちなみに…朝一でパパに食べられそうになったチョコは、寸前のところで守られた。念のためにパパ用の小さいサイズも作っておいて正解だった。  サイズの違いに気付いて不服そうな顔をしていたけれど、気にしない。  でも、冗談だったのに本気にしたの? なんて言われたらどうしよう。  言われる前に友チョコ、として友人たちと食べてしまおうか。 「あ、信号が変わっちゃう!」  そんなことを考えながら歩いていると、目の前の横断歩道の信号が点滅を始めた。 「急がなくっちゃ……ううん、いいや。ここは次の信号を待とう」  走り出しかけたけれど、ふうと一呼吸置くとゆっくりと歩く。そんな私の目の前を――高速でトラックが走って行った。……あのまま走っていたら今頃は。 「ちょっと、落ち着こうね。私……」  そもそもどうしてバレンタインチョコ一つでここまで頑張らなければいけないのか分からない。分からないんだけど……。 「でも、せっかく作ったんだし……」     
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