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きっとそんなことはないと分かってはいるけれど、あんな風に言ってもらえたら私だって女の子だもん。ちょっとぐらい舞い上がっちゃう気持ちもある。
「あれ……?」
自分自身に言い聞かせながら校舎の中へと足を踏み入れると――何故かあちこちで泣いている女の子の姿がった。
バレンタイン特有の甘ったるい雰囲気はそこにはなくて、例えるならまるでお通夜のよう……。
その光景は、私たちの教室の中でも繰り広げられていた。
「ねえ、聞いた?」
「今年の倉敷君、本命からもらいたいからってチョコ全部断ってるらしいよ!」
「えええ!? どうして!?」
「渡したかったのに……」
「ううう……倉敷君……」
教室のあちこちですすり泣く声が聞こえる。
「まさか、そんな……」
心臓の音がドクドクと大きく鳴り響く。
意識はカバンの中に入れた小さな箱に、嫌でも向けられる。
本当に? 私にもらうために? どうして?
「あ……」
自分の席にカバンを置くと……机の中に一枚のメモが入っている事に気付いた。
『屋上で待ってる』
階段を駆け上がると、そこには倉敷の姿があった。
「やっときた」
「な、なんで……」
「朝倉さんが言ったんでしょ? 0個だったらくれるって。忘れたの?」
酷いなーなんて言いながら倉敷は笑う。
「だから、どうして……。なんで私なんかのチョコをそこまで……」
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