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「一昨年の今頃さ、ここで泣いていたでしょ」
「え?」
「私のせいで、ごめんなさいって泣いてる朝倉さんの姿を見て、何があったのかずっと気になってたんだ」
友人を危険な目に合せて、ショックで泣いていた姿を、見られていたなんて……。
「周りのやつに話を聞いたら、朝倉さんのバレンタインに纏わる話を聞いちゃってさ」
「っ……」
「うちのお店にバレンタインチョコを買いに来る女の子は、みんな嬉しそうな顔をしてるのに、って思うとなんだかとても悲しくなった」
私のために、そんな辛そうな顔をしてくれるの……?
倉敷の表情を見て、私は胸が締め付けられるように苦しくなるのを感じた。
「――去年の今頃、バレンタインシーズンのお店の前を悲しそうな顔で歩いている姿も見たよ」
「え……」
「声をかけたかったけど……知らないやつから急に声をかけられても、って思ったらかけられなかった」
「っ……」
「だから今年一緒のクラスになれた時、チャンスだと思った。バレンタインまでに仲良くなって、それで……朝倉さんの中のバレンタインの悲しい思い出を俺が塗り替えてあげるんだって、そう思ったんだ」
「倉敷……」
「なんて、ちょっとカッコつけ過ぎかな」
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