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貴方にあげるお菓子はーー
「あら有紗ちゃん。おはよう。今日は早いのね?」
「えぇ!なんたって今日はバレンタインですから!」
開店してすぐの喫茶店には、まだお客さんはいない。
私と、そして弓弦さんだけ。
「弓弦さんこれ、私の気持ちです。受け取ってください」
「え……」
小さな紙袋を、弓弦さんに手渡す。
「これって……」
「見てください」
弓弦さんは少し驚いた顔をしながらも、私の前で紙袋からその包みを取り出し。そして、中を開けた。
「まぁ……これって」
「チョコレートクッキーです!どうです?もう完璧でしょ?」
今までできっと、一番上手に焼けた手作りクッキー。
その意味は。
「その……弓弦さん。こんな私と『友達』になってくれますか?」
本当の想いを殺した、私のもう一つの想い。
それに答えるように、弓弦さんは私の作ったクッキーを一つ食べて、とても幸せそうな笑みを向けた。
「勿論よ!寧ろアタシは、もう有紗ちゃんとはお友達になってたつもりだったんだから」
「え!そうだったんですか!?」
「当たり前でしょ?」
「それで。その……」
「ん?」
「感想は……」
「ふふっ、とっても美味しいわ」
あぁ……その言葉が聞けただけで、今年のバレンタインはとっても幸せだ。
「弓弦さん、有難うございました」
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