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「僕が親だと思っていた人が親じゃないって気づいたのは、4歳くらいだったと思う。その保護者の男の人が、仕事で殺した人を家に連れてきたことがあって、荷物やら服やらを処分するために大きなゴミ袋に入れて置いてあったんだけど、その中に漫画の本があったんだ。題名は忘れたけどヒューマンドラマ系の話だった。その時僕は字は読めなかったけど、絵だけでもなんとなくわかってね。その中に”家族愛”の描写があったんだけど、全くの未知の世界だったんだ。だって僕は食事を3食与えられることは無かったし、抱きしめられたり笑顔を向けられたりってことも無かったし、そもそも目を合わせることもなかったんだ。同じ空間にいるっていうことぐらいしか共通点が無かったんだよ。でも、とてもいいなって思ったんだ。身近な人を喜ばせるってとてもいいものだって学んだんだよ。だから僕は、色々お手伝いをするようになったんだ。掃除とか、洗濯とか、死体の処理とか。最初は嫌がられてひどい目にあったりもしたんだけど、やり続けたんだ。そしたら少しづつ教えてもらえるようになって、仕事に連れ出してもらえるようにまでなった。でもさ、外の世界を知ったら、人がものすごくたくさんいることも知ったんだよ。フィクションだと思ってた漫画の世界が広がってたんだ。びっくりでしょ?そしてようやく気づいたんだ。この保護者の人は『障害物』だって。その時だけだよ。仕事以外で人を殺したのは」
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