12人が本棚に入れています
本棚に追加
私は友達である青葉ちゃんに恋をしている。
出会いは高校一年の時だった。
一学期の始め、クラスに馴染めずおろおろとする情けない私に、青葉ちゃんは優しく声を掛けてくれた。青葉ちゃんの周りには既に何人か人がいて、友達に困っている様子はなかったが、なにかと私と話してくれた。
周りの人が「谷沢さん」と名字で私を呼ぶ中、青葉ちゃんだけが「萌ちゃん」と下の名前で呼んでくれることが妙に嬉しかった。
私の高校では部活に入ることが強制されていたこともあり、私は青葉ちゃんに誘われて吹奏楽部に入ることにした。楽器などほとんど触ったことが無かったが、キラキラした目で「萌ちゃん、一緒に吹奏楽部に入ろう」と言ってくれた青葉ちゃんの誘いを断る気にはなれなかった。
元々中学でフルートをやっていたという青葉ちゃんは、入部当初から上級生と比べてもダントツで上手かった。
白くて綺麗な指から奏でられる繊細な音色は、私の全身に染み込んでくる感覚がしたのを覚えている。青葉ちゃんに憧れて、私もフルートをやってみたいと言うと、青葉ちゃんはすごく嬉しそうな顔で「じゃあこれから一緒に練習しよう」と言ってくれた。その言葉は嘘ではなかった。
私たちは部活が終わった後、二人で残って自主練をするようになった。二人で自主練といっても、不慣れな私に青葉ちゃんが付きっきりで教えてくれるというものである。
フルートを吹く私を、笑顔で見守る青葉ちゃん。上手く吹けた時に、キラキラした目で嬉しそうに「萌ちゃんすごい!上手くなったね」と言ってくれる青葉ちゃんが見たくて私は一生懸命練習に励んだ。
最初のコメントを投稿しよう!