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この頃には、私の青葉ちゃんに対する思いは特別なものになっていた。
フルートを吹く青葉ちゃんは美しく、教室で楽しそうに好きなドラマや飼っているペットの話をする青葉ちゃんは可愛らしい。フルートを滑らかに操る、あの綺麗な指が好きだった。サラサラの黒髪から匂う、微かな甘い香りは私をドキドキさせた。そしてなにより、私にキラキラした目で話しかけてくる青葉ちゃんを見ていると幸せな気分になれた。
青葉ちゃんと過ごす時間が長くなればなるほど、私の気持ちも高まっていく。それと同時にこの気持ちを伝えたいと思うようになった。
そのために、バレンタインの日にはハート型のチョコを作り、学校に持って行った。しかし、一年の時も二年の時も青葉ちゃんに渡すことはなく、帰り道に公園のゴミ箱に捨てた。
気持ちを伝えて、拒否されるのが怖かった。今までの関係が崩れるかもしれないのが恐ろしかった。あのキラキラした目で話しかけてくる青葉ちゃんが見られなくなるのはどうしても嫌だった。
結局、青葉ちゃんとは友達以上の関係になることは出来ない。自分の思いを押し殺していることが、悲しくて、情けなくて、バレンタインの日は家で涙を流していた。
私にとってバレンタインは嫌な思い出だった。
それなのに、今年も青葉ちゃんのためにチョコを作り、こうして学校に持ってきてしまっている。つらい思いをするかもしれないのに、まだ心のどこかで気持ちを伝えたいと思っているのだ。
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