愛慕

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下駄箱で青葉ちゃんと合流し、一緒に教室へ向かう。鞄の中のチョコを傷つけないよう、いつもより優しく鞄を持ち、刺激を与えないように意識して歩く。 「どうしたの、萌ちゃん?歩き方おかしいよ」 私の様子がよほど可笑しかったのか、青葉ちゃんはケラケラと笑っている。その姿を見ていると、なぜか私も可笑しく思えてきて、二人で笑いながら歩いた。 教室に入ると「青葉、おはよう」と言いながら数人の女子が集まってくる。その後で「谷沢さん、おはよう」と言われると、どうしてもおまけ扱いされているように思えてしまう。 そのまま、集まってきた女子たちに囲まれ、お菓子交換が始まった。私と青葉ちゃんは手際よく周りの女子たちと手作りのお菓子を交換していく。その流れで「はい、萌ちゃん」と言い、青葉ちゃんが完成度の高いチョコタルトを渡してきた。私はありがとうと言い、お礼に他のみんなにあげたものと同じ、クッキーの入った小袋を渡す。本当に渡したかったものはこれではないが、青葉ちゃんは「わぁーありがとう。美味しそう」と喜んでいる様子だった。
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