そのチョコレートのお味は……

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 さざめく奥様方の中、一人だけ離れて顔を隠すようにして参加している女性がいた。一目で高級だと分かる上品な黒のドレス。参加するには上流階級である事が必須だが、そんな中でも彼女の姿は浮いていた。  とうとう参加者の一人が好奇心を抑え切れなくなり、声を掛けた。 「その黒いドレス、素敵ですね」 「ありがとう。主人の事を考えていたら、つい気が急いてしまって」  そう答えて顔を上げた拍子に、ヒジャブのように巻いていた彼女のスカーフが外れた。  露わになったその女性の顔を見た参加者たちは、一様に「ああ」と得心がいった顔になった。 「おめでとうございます。ご出馬、とうとう決心されたのですね。ファーストレディ」
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