0人が本棚に入れています
本棚に追加
さざめく奥様方の中、一人だけ離れて顔を隠すようにして参加している女性がいた。一目で高級だと分かる上品な黒のドレス。参加するには上流階級である事が必須だが、そんな中でも彼女の姿は浮いていた。
とうとう参加者の一人が好奇心を抑え切れなくなり、声を掛けた。
「その黒いドレス、素敵ですね」
「ありがとう。主人の事を考えていたら、つい気が急いてしまって」
そう答えて顔を上げた拍子に、ヒジャブのように巻いていた彼女のスカーフが外れた。
露わになったその女性の顔を見た参加者たちは、一様に「ああ」と得心がいった顔になった。
「おめでとうございます。ご出馬、とうとう決心されたのですね。ファーストレディ」
最初のコメントを投稿しよう!