そのチョコレートのお味は……

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「ああ……バレンタインって、なんて素晴らしい」  一人の女性がチョコレートを湯煎(ゆせん)で溶かしながら、感極まったように漏らした。  それを聞いた周囲の女性たちは、皆大きく肯いてころころと笑い合った。 「だって、愛する主人の為ですもの」 「あら、どなたへのプレゼント?」 「主人のロースクール時代からの友人に。彼にプレゼントすれば、主人が首席判事になれると思うの」 「最高の貢物ね」  奥様方たちの手順をチェックしながら、講師は思いを巡らせた。彼女の贅沢なチョコを貰うのは、今朝のニュースで大統領と握手していた首席判事だろうか、それとも……。  シャンデリアが煌めくその一室は、手元のチョコレートが溶けてしまいそうな熱気に溢れていた。バカ高い受講料なのに、なかなか受講する事が出来ない秘密の菓子教室。ここにいる女性たちは全員、細い伝手を辿ってようやく参加にこぎつけたのだ。少しばかりテンションが高くなるのも無理はない。 「それでは、みなさま。中に入れるフィリングをお選びください」
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