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<1時間前> 朝 6:55
「ツカネ、今朝はやけに早いじゃない」
ママは、低血圧のツカネがいつもより30分早く家を出ようとしているのに気付いて、驚いた。
「だって今日はバレンタインだもん。ヒロト君は凄くモテるから、色々準備が必要なの」
ツカネの手には綺麗にラッピングされた小さな包み。そういえば、チョコブラウニーの作り方を訊かれたっけ。その時のテンションといったら。ママはその光景を思い出して、ふふっと笑った。
「準備といっても、机とか下駄箱とかにチョコを入れるだけだろう」
「彼の机とか下駄箱とかに、チョコがたくさん入ってると困るの。だから早めに行って、色々やらなくちゃ……い・ろ・い・ろ、ね?」
暢気なパパの言葉に笑って答えながら、ツカネがクルリと回る。味気ない制服なのに、ふわりと翻ったスカートが優雅に見えた。
「じゃあ、行ってきます!」
軽い足取りのツカネを見送りながら、パパはぽつんと呟いた。
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