<1時間前> 朝 6:55

1/2
前へ
/5ページ
次へ

<1時間前> 朝 6:55

「ツカネ、今朝はやけに早いじゃない」  ママは、低血圧のツカネがいつもより30分早く家を出ようとしているのに気付いて、驚いた。 「だって今日はバレンタインだもん。ヒロト君は凄くモテるから、色々準備が必要なの」  ツカネの手には綺麗にラッピングされた小さな包み。そういえば、チョコブラウニーの作り方を訊かれたっけ。その時のテンションといったら。ママはその光景を思い出して、ふふっと笑った。 「準備といっても、机とか下駄箱とかにチョコを入れるだけだろう」 「彼の机とか下駄箱とかに、チョコがたくさん入ってると困るの。だから早めに行って、色々やらなくちゃ……い・ろ・い・ろ、ね?」  暢気なパパの言葉に笑って答えながら、ツカネがクルリと回る。味気ない制服なのに、ふわりと翻ったスカートが優雅に見えた。 「じゃあ、行ってきます!」  軽い足取りのツカネを見送りながら、パパはぽつんと呟いた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加