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二十年経ち、そこからまた数年。
今度は、清三がいなくなった。
原因は、発作を起こし頭をぶつけたことによるらしい。
とうとう、一人になってしまった俺は、年甲斐もなく、大泣きしていた。
思い出が走馬灯のように駆け巡った。
四人の思い出が三人になってしまい、三人の思い出が二人になり、二人の思い出が……とうとう一人になってしまった。
それからは、特に覚えていない。
ただただ仕事をこなして、五月九日には写真を立てて一人で酒盛りをする。休日なんて何もしないに等しい。
そんな生活を、また数十年。
俺は、動けない体になった。
しわくちゃの顔に、禿散らかした頭。
あいつらが生きてたら、一体なんて言われるか。
掛けてある時計を見る。
それと同時に、
「おいおい、はげちらかしてんじゃないか!」
幻聴が聞こえた。
「あたしはもともと、はげるタイプって睨んでたぜよ」
幻が見えた。
「頭に関しては遺伝だ。こればっかりはしょうがねぇ」
幻聴と幻に、涙がでた。
「なんだよ……迎えにきたのか……」
かつてのみんなが、見えてる気がしている。
あぁ、俺はもう逝かなくてはいけないのか。
「悲観することないよ~荘司。あたしらがおるかんね!」
「そうだぞ荘司! あの世だからって寂しかないぞ!」
「てめぇらと一緒だと、うっとおしいがな」
「……いや、心強いよ」
そういって、俺は目をつむった。
今日は特別な日。
それは、俺たちが集まった日であり、俺たちがばらばらになった日。
五月九日。五時九分。
何十年も超えて、また四人が集まった……新たな日。
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