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オオカミ少年のお話
あるところにとても正直な少年がいました。
生まれてこの方、一度たりとも嘘をついたことがない。
そんな嘘みたいなことを真実として口にすることが出来る、
それくらいの正直さ。
そして、その正直さは彼の妹も同じ。
二人は村の皆から愛される、そんな兄妹。
少年は正直者であるのと同時に羊飼いでもありました。
晴れた日には「よっほほーい」と声を上げて、
広大な土地で羊たちを追い回すのです。
彼の羊たちは、白くてふわふわ。
よく少年の妹をその背中に乗せては、
彼の「よっほほーい」の掛け声とともに、
まるで強い風に吹かれて空を漂う雲みたいに大地をもふもふと 歩き回りました。
その日も「よっほほーい」「もふもふ」
「よっほほーい」「もふもふ」「よっほほーい」「もふもふ」。
正直な少年と正直なその妹、そして嘘をつかない羊たちは、 夕暮れになるまでそれらを繰り返していました。
ふとびっくりするほど冷たい風が吹きました。
妹は羊たちのふわふわに埋もれているので、
そのことに気付きません。
ですが、少年は一つ身震いをして陽が沈んでいく丘を見上げました。
するとそこに黒くて大きな塊が。
ごわごわとして固い毛、ぎらぎらと光る眼差し。
誰かに恨みでもあるかのように伸びた鋭い牙、
世界のすべてを許せないと表現する凶悪な爪。
少年は「よっほほーい」のかわりに大きく叫びました。
「おおかみだー、おおかみが出たぞー!!」
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