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今日は特別な日だ。アイドルの野崎マミに会うんだ。
彼女の出演しているドラマをみて一目惚れをしてしまった俺は、ファンになってしまった。以来映画にコンサートにイベントとなると追っかけに忙しい日々を送っている。
個人的に会いたい俺は、とんでもないことを考えていた。マミを誘拐してきて一日を過ごすことだ。バレたら俺は、逮捕され、一生を棒にふることになるが、マミといたことが思い出になればそれで良いのだ。
数日後、仕事から帰って来た時、部屋の鍵を空けて入ろうとしたら、何者かが中に入ってきた。女だ。女は帽子を脱ぎマスクを取るとなんとマミだったのだ。
「なんでマミがここに来るの?」
マミは、自分の口に手をあててしーとささやくように話した。
「あなた、イベントでお見掛けする方だなあと思って。一度個人的にお話ししたいなあと思って、ファンレターの住所調べて来たの」
「今日は、CMの撮影じゃないですか?ドタキャンいいんですか?」
「疲れたのよ、休みくらい欲しいわ、風邪だって嘘ついて休んだのよ」
「狭いですが、こちらへどうそ、お茶容れます」
俺は、やかんに水を入れて、ガスを付けた。
「私が入れてあげるわ、カップどこ?」
「そんな、アイドルにそんなことさせられません」
「やりたいの、お願い」
マミは、戸棚からマグカップを2つ取りだし、手際よく、コーヒーを容れてくれた。
俺とマミは、延々とお互いのことを話した。初めて会ったのに、まるで恋人同士のように。現役のアイドルとお茶して話すだなんて夢をみているようだった。
つい、俺は、眠くなり、その場で寝てしまった。
しばらくして俺は目が覚めて起き上がった。マミの姿はなく、部屋のポスターや写真などのグッズにはマミの直筆サインがしてあった。そばには、最新CDと写真集と手紙が置いてあった。
「誘拐犯さんへ 今日一日監禁してくれてありがとう! 仕事に疲れていて芸能界引退しようと思っていたの。でも、あなたのような優しいファンがいるって分かって続けることにしました。今日のことは二人だけの内緒ね、楽しかったです」
「マミ、楽しかったよ、でもなんで俺が誘拐しようとしたこと分かったんだろう? まあ、いいや、CD聴こう」
この一日は俺にとって特別な日だった。
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