三三七拍子の告白

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三三七拍子の告白

法学部の校舎前にある大きな広場は学生たちの憩いの場となっていて、今日は大学内で一番規模の大きな放送サークルが特設ステージをつくってイベントを開催している。 そのステージ裏で、私は武者震いと言い張りながら恐怖と緊張に押し潰されそうだ。 『公開告白企画~恋の天使はキミに微笑むか?~』 “スーパーハッピーバレンタイン”と銘打ったイベントにはいくつかの企画があるらしく、とくに公開告白の出場者を広く募集していた。 私は同じゼミの梶田くんのことが好きだ。 もしかして両思い?という淡い期待を抱く瞬間が何度もありながら、それを確かめる度胸がなくてずるずる現状維持を続けていた。 いいかげん告白せねばと思いきっかけを探していたから、梶田くんが友人に請われてイベントの音響を手伝うことになったと聞いて企画への出場を決めた。 告白する相手にもステージへ登壇してもらう必要がある企画で、シャイな梶田くんは苦手な雰囲気だろう。 いち観客としての梶田くんだったら、呼び出しても応じてもらえないかもしれない。 でもスタッフとしてその場にいる梶田くんなら、周囲に引きずられてでも顔を出してくれるはず。 申し訳ないけれどチャンスだ。 お調子者として通っている私がフラれても笑われるのがおちで悲壮な空気にはならないだろうし、梶田くんは大人で紳士的だから変に避けられたりはしないだろう。 ネガティブシンキングとポジティブシンキングを繰り返しながら出番を待つ時間は、おどろくほど長く感じられる。 事前の顔合わせによれば、出場者は5人。 直前の抽選で私は3番手の告白になった。 今2人目ががんばっているということは認識しているけれど、1人目がうまくいったのかはわからないし、2人目がうまくいきそうなのかも気にする余裕などなかった。 心臓が口から出そうってこういうことか。 ゼミの発表なんかよりはるかに重圧だ。 どうやら2人目のターンが終盤に向かっているようで、歓声が波のように押し寄せてくる。 その熱狂が徐々に静まって来た頃、ついに名前が呼ばれた。 踏み出す1歩が尋常ではないくらいに重い。
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