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「わぁー! 毛糸、こんなにたくさん!」
「お母さん、ゆうべ、頑張ったんだからね。忘れずに持っていくのよ」
「赤と白だ! かわいい! クリスマスっぽいね」
起きてすぐに大量の毛糸玉をみつけた愛華は、大はしゃぎだった。これで生活科の時間には、クラスメイトたちと一緒に、クリスマスのかざりを作れるだろう。できあがった作品は、学校の廊下だかホールだかに飾られるそうだ。
早苗は毛糸玉をひとつ取り上げ、優しく撫でた。
(お義母さんの気持ちも知らずに、ごめんなさい。愛華のことを想ってくれて、ありがとう)
セーターに込められていた義母の想い。もし、まだ少しでもこの毛糸に残っていたら、学校で友達と楽しく過ごす愛華の様子をそばで見ていてほしい。
最後にもう一度、毛糸玉をそっと撫でて、ランドセルの横の手提げに戻した。義母の優しい声が、小さく聞こえた気がした。
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