手ぶくろはまだ買わないで

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「ファミマ寄るけど、欲しいものは?」 「つぐみさん」 「バカ」  彼女はそう言って僕の脇を肘でつついた。 「言うからには、ありったけもらっていただきますからね」  耳もとに吐息を残して自動ドアをくぐっていく彼女を見送って、僕は傘をたたみ、両手をカイロで温めた。  こういう間際の、女の子の買い物をのぞき見するものではないだろう。 〈買っておくものは?〉  店内のつぐみさんからラインが来た。 〈ピザまんと、鮭のおにぎりと、野菜ジュースと、スポーツドリンク〉 〈ほかには?〉 〈手ぶくろはまだいいです〉 〈スタンプ(怒)〉  彼女に送ったラインがふたりの一線になるのだなと、感慨深く線路の音を聞きながら、僕は熱に浮かされた心音を必死にごまかした。
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