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弟へ 貴方との最初の覚えている思い出は、 小さな生き物が家にやってきた喜びです。 ふにふにして柔らかくて、愛しくて、愛しくてたまりませんでした。 少し大きくなると、貴方は私の身長をあっという間に追い越して、 抱っこもできなくなりましたね。 それでも、お姉ちゃん、と後をついて来てくれることが誇らしかった。 やんちゃだった私と、ままごとが好きだった貴方。 まるで性別が反対みたいだねと言われた日もありましたね。 でも、小学校を卒業し、中学に上がるころには お互い話をめったにしなくなり、同じ家にいるのに空気のような存在になってしまいました。 気にはかけていたのです。 ただ、口下手なので、どう声をかけていいのかわからなかったのです。 高校は同じ所に入ったから、少しだけ交流ができましたね。 といっても、私、忘れっぽいから二学年下の貴方に体操服を借りにいったり、 という残念な交流なのですが。 それでも、また話が出来たこと。ちょっと嬉しかったんですよ。 進学して、 就職して、 大人になると顔を合わせることすらなくなりました。 そう、お父さんが亡くなったあの時まで。 長男の貴方は、私よりも年下なのに、誰よりもしっかり立っていました。 お父さんと対面して倒れそうになった私の方を支えてくれた時、 とても、とても安心したんです。 喪主としてあいさつや来訪者の対応もこなす貴方を見て、 成長を感じてすごく嬉しかったこと、内緒にしていましたが白状してしまいます。 だって、今しか伝える機会がないと思うから。 貴方が弟で誇らしいです。 ありがとう。 初霜 結花
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