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別れ
貴方とは高校の三年間ずっと一緒に過ごしましたね。
大学に進学してすぐのこと、覚えていますか?
私達は、お互い新しく出来た友達との交流が楽しくて、少しずつ、少しずつ、気持ちが離れてゆきました。
「別れよう。その方がお互いのためだと思うの。お願い。」
「他に好きな奴ができたのか?」
私は貴方の問いに答えることが出来なかったの。だって、心は離れていっていたけれど、好きなのは貴方だけだったから。
「貴方は他に好きな人はいないの?」
そう問いかけると正直者の貴方は本当の気持ちを答えてくれたよね。
「お前のこと、まだ好きだけど、正直、別に気になってる人がいる」
知ってました。だって、その子が私に会いに来て、こう言ったから。
「彼のことほんとに好きなら、別れてください。彼は私のこと好きだと言ってくれたけど、貴方の事も大切だからどうしていいかわからないって苦しんでるの。彼を解放して苦しみから救ってあげて」
涙がとまりませんでした。
嘘であって欲しかった。
でも貴方の言葉で彼女の言葉が真実で、私は貴方を苦しめる存在だと確信したから。
「よかった。私も貴方が大事。だから、さようならだね」
私は手を差し出す。
彼は何も言わずにその手を握る。
そうして二人で泣きましたね。
言葉はなかった。
でも、その一瞬で貴方の心から私が消えたことがわかってしまったんです。
悲しくて、苦しかったけれど、それで貴方が幸せになるのなら。
それだけでよかったんです。
だって愛していたから。
そうして、二人で泣いた後は、何も言わずに、そっと手を離してお互い別の道を歩き始めた。振り返ってはいけない。
だって、振り返ってしまったら、新しい恋に向けて歩いていく貴方の背中を見なくてはいけないから。
「愛してる」
現在進行形の言葉が口から溢れる。
私は泣きながら、ただ歩いた。
どうか、貴方が幸せになりますようにと、自分を騙しながら、残った愛情でそう願うしかなかったんです。
書いていて、思い出して涙が出て来ちゃった。
文字、少し滲んでしまったけど許してね。
この手紙は書き直すのがちょっと辛いの。
だからこのまま貴方におくります。
初霜 結花
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