出会い

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出会い

クロ様 貴方と出会ったのは、彼と別れた帰り道、 たまたま立ち寄ったペットショップでしたね。 貴方には、「大特価!」そう書かれた札がはってありました。 きっと、誰からも見向きされず、売れ残ってしまっていたのでしょう、 私は貴方に自分を重ねてしまって、どうしても、貴方から目を離せなくなったの。 「おこずかい、ためていた分全部なくなっちゃうな」 貴方は私が迎えに来ることを予感していたかのように、 それまで所在なさげだったのに、 私を見ると、ちぎれんばかりに尻尾を振ってくれましたね。 私はそんなあなたを抱き上げて頬ずりしました。 お店の人と話をして、貴方とあなたの生活に必要なものをすべてそろえて、 大荷物を抱えてペットショップを後にしました。 荷物が重くて貴方はリードに繋いで歩いてもらったけれど、 初めてのお散歩にも関わらず、貴方は私を何度も振り返り、 私の歩みに合わせて歩いてくれましたね。 私、すごく、すごく、嬉しかった。 クリクリの瞳が振り返って私を見るたび、私は微笑み返し、 それを幾度繰り返したでしょうか、 家に到着することにはあなたの名前はクロちゃんに決まっていましたね。 黒い毛並みに黒い瞳、全身真黒だったから。 安直な名前しか付けてあげられなくてごめんね。 でも「クロちゃん」と呼ぶたびに振り返って尻尾を振ってくれたから、 貴方も気に入ってくれたんだって、そう思うととても嬉しかったです。 家に帰ってからは大変でしたね、 覚えていますか? 両親の第一声は「返してきなさい」でした。 そこで私、小学生以来初めて両親の前で大泣きしたんです。 クロちゃんはもう私の心の支えになっていること、 彼氏に振られてもう私にはクロちゃんしかいないんだ~って 子供みたいに泣き叫んで、そんな私を心配して、 クロちゃんはずっと涙をなめて、慰めてくれていましたね。 両親は最初渋っていましたが、 私とクロちゃんのきずなが伝わったのでしょう。 仕方なくですが許してくれました。 それから毎日一緒のベットで眠って、 朝はクロちゃんに起こしてもらえるようになったから早起きになって 散歩を毎日するようになったからスタイルがよくなって 嫌なことがあってもクロちゃんが慰めてくれるから心が安定して 貴方のおかげで、私はすごく、成長しました。 貴方にあえて、よかった。 初霜 結花
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