1/2
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

小沢 直様 節分が過ぎたというのに、春はまだ先のようですね。 でも今日は良いことがあったんです。 ベランダで育てている梅の木の花が咲きました。 ピンクの花びらで小さくてとてもかわいいの。 梅といえば、貴方の高校生の時のお弁当、笑っちゃった。 なかなか友達が出来ない私は、いつも一人でお弁当を食べていました。 そんな私の隣の席にあなたはいつも来てくれましたね。 「ここだとさ、梅の木が見えるんだよ。おれ梅すごく好きだから」 変な言い訳をするなあって思いました。 梅の花がすきなのは分かるけど、梅の木が好きな人なんて今まで出会ったことなかったから。 「花はもうちってしまったよ?葉もまだ伸びてない枯れ木みたいな木、見て楽しいの?」 私がそういうと 「お前はわびさびがわかってないな、見ろ、あの幹のうねり具合。最高じゃないか」 熱弁。正直ひきました。 貴方は語りながら弁当の包みを開き、ふたを開けましたね。 ここで私またひきました。 だって、真っ赤だったから。 白いご飯が梅干の赤で征服されていて、目が痛くなるような光景。 わびさびの「わ」の字もないその弁当を見て確信しました。 この人単に梅干が好きなのね。と。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!