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「これ、食べる?」 ためしに私のお弁当に入っていた、おばあちゃんお手製の梅干を差し出すと、 キラキラ目を輝かせて パクリ。 箸に食いついてきた貴方。 私また、少しひきました。 「すごい!今まで食べてきた梅干のなかでダントツにうまい!甘みと酸味が絶妙だ」 少し頬を紅潮させて熱弁しはじめました。 ここでもちょっとひきました。 この日だけで何回ひいてしまったかわかりません。 でも、同時に、可愛い人だなって思ったんです。 「おばあちゃんがつけてくれたの。庭にね、梅の木があって沢山実がなるから」 「おまえんちすごいな!おれもお前の家のこになりたいなあ」 まるで子供のようなことを言う貴方。 笑ってしまいました。可愛くて。愛おしくて。 「そうだ!もしかしてお前もばあちゃんになったら梅干つけられるようになるのか?」 (いいえ、梅干を漬ける技術は遺伝性ではないので無理です。) 心のなかで即座にツッコミを入れましたが、あまりにも無邪気に言うものだから、 私はちょっぴり嘘をつきました。 「今はまだむりだけど、いずれはそうなるかもね」 半分は嘘、半分は本当。 だって、漬け方をならって、美味しい梅干を漬けられるようになればいいんだから。 それからすぐにおばあちゃんから梅干の漬け方の調理覚書をもらって、 毎年手伝いをして、 おばあちゃんの味と同じくらい美味しい梅干が漬けられるようになったんだよ。 だから、私にはひとつの野望があるのです。 ベランダの梅の木を実がなるくらいまで大きく育てて、 自家製の梅干をつけること。 そうすれば、いつかあなたのお弁当に自家製の梅干をいれることができるでしょう? それに、おばあちゃんになってもずっと、貴方の好きな梅干を食べさせてあげることができるでしょう。 長くなりましたが、つまりはね、 私はあなたがおじいちゃんになってもそばにいたい それがいいたかったのです。 初霜 結花
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