貴方へ

両親

お父さん、お母さん

初めての手紙、すごく緊張します。
私、口下手だから、きっと手紙の方が本当の気持ちを伝えられると思うんです。

私は三人姉弟の真ん中で、
運動も勉強も人並み、きっと期待外れの娘だったでしょう。

でも、いい思い出もあるんですよ。

初めて行ったドライブ旅行。
車の中でご飯を食べたり、フェリーに車ごと乗り込んで、
今まで一度もやらせてもらえなかったコインゲームをさせてもらったこと
船の甲板を走り回る私達を温かく見守ってくれていたこと。

今でも思い出します。

思春期に入ると、めったに話をしなくなりましたよね。
進学して家をでるとさらに、メールすらしなくなって、
きっと心配ばかりかけてしまったでしょう。

そんな親不孝な娘に対して、いつも心配をして、たまに帰る度
夫婦で空港まで迎えに来てくれましたね。

私は両親から好かれていないと勝手にすねて距離をとっていましたが、
そうではなかった。

そう。お父さんが亡くなって、
初めてお父さんの部屋に入った時のことです。
私が小学校の時に使っていた学習机を自分の書斎の机に使ってくれていたこと。
引き出しのなかに幼い文字で綴った私と姉の手紙があったこと。

泣いてしまいました。
もう遅いけど、それでも伝えたいです。
お父さん愛していました。

お母さんにも、後悔したくないから伝えます。
生んでくれてありがとう。
お母さんのことだって心から愛しています。

だめです。私はやっぱり口下手なだけではなく、
文章もへたですね。

気持ちの半分も伝えられません。

どうか、この手紙は誰にも見せないでくださいね。

では、寒い日がつづきますが、どうか体に気を付けて。

初霜　結花