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プロローグ
「結菜、ごめん。2月14日に太一たちとスノボに行くことになった」
桐生颯太は目の前で両手を合わせると頭を下げた。
「ええ~~?マジぃ~~?」
私は呆れたという表情で、ショートの黒髪が揺れるくらい、上半身を左右に大きく揺らした。
「バレンタインなんだよぉ~?私からチョコはもらわなくていいわけぇ~?」
「あ、それはいる。帰ってからちょうだい」
颯太は臆面もなくニコッとした。
でも、彼にしてみれば覚えたてで面白くなったスノボなのに、なかなか休みが取れなくて、やっと取れた休みがその日だった。
それに、今が一番雪質が良いらしい。
彼は笑顔で「ほんとごめん。この埋め合わせは倍にして返すから」と言いながら再度、手を合わせた。
そして、ウインク。
私はそんなお茶目な婚約者を憎めなかった。
だから、
「もう!恋の神様のバチが当たっちゃえ!」
と、私も笑いながら彼を送り出した。
仕方ない。
私が彼に恋をしてるから。
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