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颯太たちはコースを変えながら何本か滑っていたが、太一が大きなコーナーで転けた。
ボードが引っかかって転がったせいで、まるでコメディの様に顔から雪面に突っ伏していた。
颯太はその太一に向かって雪を大量に浴びせながら止まった後、そのまま後ろに倒れこんだ。
「モゴモゴ」
雪の中で太一が何か言ったようだ。
颯太はそのまま大の字に寝転がって、晴れ渡った青空を見ていた。
谷で狭くなった白っぽい世界の上に、くっきりとした濃い青色の世界が広がっていた。
「最高だよな」
彼らを守るようにコース山側に立ったままの悟史も、颯太の言葉とその視線に誘われて空を見上げた。
「ああ」
「結菜もやればいいのに」
颯太が青空を見たまま言った。
「そうだよな。あいつ、あれだけ活発そうなのに運動オンチってどうなのよ?」
雪に突っ伏したままだった太一がガバッと起き上がって言った。
「そういうギャップもかわいいの」
颯太がけらけらと笑った。
「はいはい。ごちそうさま」
太一は拗ねた。
笑いながら、颯太は目の前にある少し小さめの雪のジャンプ台を見た。
オレンジ色のポールとネットの向こう側はスノーボードクロスのコースだった。
数人が同時に滑って、ジャンプ台やその他の障害物を越えながら速さを競う競技だ。
雪上のF1と呼ばれている。
「このくらいの高さなら飛べるかな?」
颯太はそう言いながら、ボードを外して手に持つと、そのネットを越えた。
「おい、颯太、まずいだろ」
「やめとけ」
「大丈夫、今は誰も滑ってないし、このジャンプ台だけな」
颯太は悟史と太一の止めるのも聞かずにコースを少し登って行った。
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