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※※※
「ほら……夢、こっちにおいで。まったく……本当に悪い子だね、夢は。何度言っても、わからない。ーーお前は、俺のものなんだよ!!」
不気味に笑い続ける奏多が、狂ったように叫びながら夢ちゃんへと近付いて来る。
腕を掴もうとした奏多から夢ちゃんを庇うと、俺はワザと机にぶつかり裁断バサミを優雨ちゃんの方へと落とした。
「ーー嫌っ!! ……来ないでぇぇぇー!!」
恐怖に震えながら、泣き叫ぶ夢ちゃん。
俺は奏多の腕を押さえつけると、そのまま夢ちゃんから遠ざけた。
チラリと奏多の背後に視線を向けてみれば、床に落ちた裁断バサミを拾い上げる優雨ちゃんの姿が見える。
俺は誰にも気付かれないように小さく微笑むと、奏多の腕を掴んだ手にグッと力を込めた。
そしてーー
ハサミを握りしめた優雨ちゃんが、奏多に向かって突進する姿を黙って見届けた。
「ーー……は?」
やけにゆっくりとした動きで、優雨ちゃんのいる背後へと振り返った奏多。
「……っ、いやぁぁぁああーー!!!!」
一瞬静まり返った教室は、朱莉ちゃんの上げた悲鳴で再び時間が動き始めた。
「ーーあんただけは……っ、絶対に許さない!!」
そう叫んだ優雨ちゃんが、今度は奏多の正面からぶつかった。
「夢には……っ! 夢には絶対に近付かせない!!」
そう言って、一度奏多から離れた優雨ちゃん。
その手にはーー
血に染まったハサミが、しっかりと握られている。
「ぁ……っ……あ゛っ……ぁっ」
小さく震える声が漏れ聞こえて、チラリと後ろを振り返ると……。
ガタガタと身体を震えさせながらも、その光景を見ている夢ちゃんがいる。
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