71人が本棚に入れています
本棚に追加
※※※
「……も、森に入るの? ちょっと……怖いな……」
目の前に広がるジャングルのように鬱蒼とした森は、まだ陽が沈んでいないというのに怖がるには充分な暗さでーー
今にも消えてなくなりそうな声で、小さく訴えてみる。
「大丈夫だよ、夢ちゃん。皆んな一緒だから」
「何かあったら、俺がついてるから安心して」
「私だっているから。大丈夫だよ、夢」
「夢ってばぁ〜。まだまだ暗くないから、大丈夫だって!」
「懐中電灯も持って来たし、大丈夫だよ。……ね? 夢だって、凄い所見に行きたいでしょ?」
森を見て怯んだ私に、皆んなが口々に説得を始める。
ーー確かに、ここまで来て1人でお留守番は嫌だ。
むしろ、こんな森の入り口で1人待たされる方がよっぽど怖い。
何も考えずに着いて来ただけなので、帰り道なんてわかるはずもなく……。確か、ここへ着くまでに10分くらいは歩いた気がする。
ということは、まず1人でテントまで帰るのは難しいだろう。かといって、自分1人の為に皆んなも行かないでとお願いするのも申し訳ない。
チラリと目の前の涼くんを見ると、自信満々に右手に持った懐中電灯を見せてくる。
「一緒に行こう、夢っ!」
ニカッと満面の笑みで笑いながら、空いている左手を私の目の前へ差し出した涼くん。
私は躊躇いがちに小さくコクリと頷くと、差し出された左手に自分の右手をそっと重ねた。
最初のコメントを投稿しよう!