小5【夏】

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※※※ 「……も、森に入るの? ちょっと……怖いな……」  目の前に広がるジャングルのように鬱蒼(うっそう)とした森は、まだ陽が沈んでいないというのに怖がるには充分な暗さでーー  今にも消えてなくなりそうな声で、小さく訴えてみる。 「大丈夫だよ、夢ちゃん。皆んな一緒だから」 「何かあったら、俺がついてるから安心して」 「私だっているから。大丈夫だよ、夢」 「夢ってばぁ〜。まだまだ暗くないから、大丈夫だって!」 「懐中電灯も持って来たし、大丈夫だよ。……ね? 夢だって、凄い所見に行きたいでしょ?」  森を見て怯んだ私に、皆んなが口々に説得を始める。  ーー確かに、ここまで来て1人でお留守番は嫌だ。  むしろ、こんな森の入り口で1人待たされる方がよっぽど怖い。  何も考えずに着いて来ただけなので、帰り道なんてわかるはずもなく……。確か、ここへ着くまでに10分くらいは歩いた気がする。  ということは、まず1人でテントまで帰るのは難しいだろう。かといって、自分1人の為に皆んなも行かないでとお願いするのも申し訳ない。  チラリと目の前の涼くんを見ると、自信満々に右手に持った懐中電灯を見せてくる。 「一緒に行こう、夢っ!」  ニカッと満面の笑みで笑いながら、空いている左手を私の目の前へ差し出した涼くん。  私は躊躇(ためら)いがちに小さくコクリと頷くと、差し出された左手に自分の右手をそっと重ねた。
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