72人が本棚に入れています
本棚に追加
※※※
テントでの事があってから、優雨ちゃんと夢ちゃんの様子を時折、心配そうな瞳で見つめている涼。
そんな事情も知らずに、さっきまで無邪気に川で遊んでいた夢ちゃん。
俺は夢ちゃんの可愛い笑顔を思い出すと、目の前にいる優雨ちゃんに向かって貝殻を差し出したーー
「ーーはい、これ。優雨ちゃんにあげる」
「えっ……、私? ……夢にじゃなくて?」
驚く優雨ちゃんは、そう告げながら俺のことをジッと見つめる。
「……うん。優雨ちゃんにあげるよ」
優雨ちゃんを見つめて小首を傾げると、俺はニッコリと笑ってそう答えた。
「……何で?」
「うん……。実を言うとね、本当は夢ちゃんにあげるつもりだったんだ」
「じゃあ、夢にあげたら?」
「もう、涼に貰ったみたいなんだよね……」
「……そう」
俺の発した言葉に、複雑な表情を見せる優雨ちゃん。
「あの2人は、両思いらしいしね……」
「え……っ?」
ポツリと小さく呟くと、驚いた顔をして俺を見つめる優雨ちゃん。
「そんな、事……誰が言ってたの?」
「うーん……。誰にも秘密だよ? さっきね、聞いちゃったんだ。涼が、夢ちゃんに告白するとこ。……で、涼が言ってた。両思いだねって」
「…………」
優雨ちゃんの様子をチラリと見てみると、表情こそ普段通りに見えるが……。その手は、小さく震えている。
「……あの2人は、両思いなんだね」
俺はハッキリとした声でそう伝えると、優雨ちゃんに向けてニッコリと微笑んだ。
ーーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーー
最初のコメントを投稿しよう!