【真実】

9/11
前へ
/119ページ
次へ
 俺はそんな夢ちゃんをしっかりと抱きしめると、その視界を遮った。 「夢ちゃん……っ、見ないで。見ちゃダメだよ……」  大声を上げて泣き叫びながら、床に向かって崩れ落ちてゆく夢ちゃん。  それを追うようにしてしっかりと抱きとめると、夢ちゃんは震える指先で俺の背中にしがみついた。  ガタガタと震えながらも、大声を上げて泣き続ける夢ちゃん。俺はそんな夢ちゃんをしっかりと抱きしめると、安心させるようにしてその背中を(さす)り続ける。 (ごめんね、夢ちゃん。……怖いよね。大丈夫だよ、もうすぐ終わるからね。……もうすぐ、終わるからーー)  腕の中にいる夢ちゃんに向けて、心の中でそう囁くとーー奏多に向かって、何度もハサミを突き立てる優雨ちゃんの姿を眺める。  そんな光景に、興奮と喜びから歓喜した俺はーー  悦に震える身体を必死に堪えると、喜悦した微笑みを小さく漏らしたのだった。 ーーーーーー ーーーー  夢ちゃんと朱莉ちゃんを教室から出て行かせると、仰向けで倒れている奏多の方へとゆっくりと近付いてゆく。  腹部に俺のハサミを刺したまま、苦しそうな呼吸を繰り返している奏多。 「馬鹿だなぁ……、奏多。ーー助かったらダメだろ?」  奏多を見下ろしたまま、先程奏多が言っていた言葉を告げると、恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべる。  苦痛に顔を歪める奏多の姿に酷く興奮してーー  溢れ出る喜びに、ブルリと身体を震わせる。 (……今まで、ご苦労様)  俺はおもむろにその場に屈むと、奏多の耳元に向けてゆっくりと口を寄せる。 「ーーばいばい、奏多」  喜悦した微笑みを(たた)えながら、ニヤリと口元を歪ませた俺はーー  腹部に刺さったままのハサミを握ると、更に奥へと押し込んだ。 ーーーーーー ーーーー
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加