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大人っぽく整った顔立ちから作り出されるその笑顔は、とても優しく穏やかな表情をしている。
肩まで伸びた髪の毛を耳にかける仕草が、妙に大人っぽく感じてドキリとする。
「えっ。でも……」
「大丈夫だよ」
自分の担当くらいやらなくてはと、申し訳なく思い躊躇う仕草を見せれば、優しく微笑み大丈夫だと告げる優雨ちゃん。
(本当に、頼んじゃってもいいのかな……?)
そんな事を考えていると、私へと向けられていたその視線が、ゆっくりと私の背後へと向けて移動した。
どうしたのかとその視線を辿って振り返ってみると、そこには私を見下ろす涼くんが立っていた。
「俺がやるよ」
ニカッと笑った涼くんは、私の手に握られたペグハンマーを取ると、一気にペグを打ち込んでいく。
そのままあっという間にペグを打ち込み終えると、「はい、これで終わり」とペグハンマーを私の手に戻し、その場を立ち去って行く涼くん。
「あっ……ありがとう!」
離れてゆく涼くんの背に向けてお礼を告げれば、振り返った涼くんが私に向けて笑顔で手を振って応えてくれる。
それに応えるようにして小さく手を振り返すと、そんな私の姿を確認した涼くんは、ニコリと微笑むと自分のテントへと帰っていったーー。
「ーーねっ? 言ったでしょ? 涼は、夢の事が好きなんだよ〜」
小首を傾げながら、からかうように私の顔を覗き込む朱莉ちゃん。その大きな目を上目遣いにしてクスクスと笑う姿は、愛嬌たっぷりでとても可愛らしい。
私は恥ずかしさから徐々に顔が赤くなってきたのを感じると、それを隠すようにして俯いた。
「もう……。朱莉、いい加減に夢をからかうのはやめなよね」
「は〜い」
未だ朱莉ちゃんはクスクスと笑ってはいるものの、優雨ちゃんのお陰でやっとこの会話を終えることができる。そう思うと、熱かった顔から徐々に熱がひいてくるような気がした。
そっと両手で頬に触れて確認してみれば、それはいつもと変わらぬ体温で……。良かった、と一人胸をなでおろす。
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