67人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
「ーーテントが出来た班は、夕食の準備を始めなさーい!」
触れていた頬から両手を離すと、顔を上げて声のした方へと視線を向けてみる。すると、少し離れた場所から次の指示を出している先生の姿が目に留まった。
周りを見渡してみれば、既に夕食作りに取り掛かっている子達がチラホラと目につく。
「私達も行こうか」
「「うん」」
優雨ちゃんに促されるようにして屋外キッチンへと向かうと、私達に割り当てられた場所には既に人数分の食器が揃っていた。
きっと、先に来た誰かが用意してくれたのだろう。
そう思って見渡してみれば、そこにはやっぱり見覚えのある後ろ姿があった。
「……あっ! やっと来たんだねっ」
私達の気配に気付いたのか、振り返った楓くんはニコリと微笑むと私達の元へと歩み寄ってきた。
「涼達は、炭と食材を取りに行ってるよ」
目の前でピタリと立ち止まると、可愛らしい笑顔でそう告げた楓くん。
女の私よりも可愛い顔をした楓くんは、知らない人が見たら女の子だと勘違いしてしまうかもしれないーーそう思う程に、とても可愛らしい顔立ちをしている。
左目の泣きぼくろが、その顔立ちによく似合っている。
「食器は、楓が持ってきてくれたの? ありがとう」
「さっすが! うちの班の男子達は、頼りになるね〜! 楓、ありがとう」
「どういたしまして」
優雨ちゃんと朱莉ちゃんが口々にお礼を告げると、ニッコリと可愛らしく微笑んだ楓くん。
「……楓くん、ありがとう。遅くなっちゃって、ごめんね?」
「大丈夫だよ、夢ちゃん」
遅くなってしまった事を申し訳なく思い謝ると、楓くんは「気にしなくていいよ」と優しく微笑んでくれる。
「よしっ。じゃあ……涼達が帰ってくる前に、食器洗ってよっか」
そんな朱莉ちゃんの言葉を合図に、それぞれが食器を持って流しへと移動を始める。
最初のコメントを投稿しよう!