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小5【夏】
容赦なく照りつける太陽に、ジワリと汗が滲む。
額に流れる汗を片手で拭うと、私は持っていた麦わら帽子をかぶりなおした。
「晴れてよかったぁ」
前日まで降っていた雨が嘘のように、雲ひとつない青空を見上げて呟く。
楽しみにしていた林間学校が中止にならずに良かったと、思わず笑みがこぼれる。
ジリジリと照りつける太陽に、心地よい風が吹いてフワリと髪を撫でてゆく。
(気持ちいい……)
あまりに心地よい風に、そっと目を閉じると両手を広げてみる。
川の流れる音、鳥のさえずり、緑の匂い。
それらを肌で感じ、風に乗ってまるで空を飛んでいるかのような感覚。
(本当に、飛べたらいいのになぁ……)
そんな事を考えていると、少し強めの風にあおられ足元がぐらついた。
「……あっ」
倒れるーーそう覚悟した時、後ろから誰かに肩を掴まれた。
「ーー夢、大丈夫?」
そう声を掛けられ、倒れないように支えてくれたんだと気付く。
「っ、うん。……ありがとう、涼くん」
ホッと胸を撫で下ろしながら振り返れば、ニカッと爽やかに笑う涼くんと目が合った。
涼しげな目元に、通った鼻筋。小麦色に焼けた肌がよく似合う。
整った顔立ちながら、その屈託のない笑顔には思わず見惚れてしまう。
「皆んなもう、先に行っちゃったから。……俺らも急ごう」
そう言った涼くんの目線を辿ると、先生に引率された生徒達が、楽しそうに話しながら川辺を歩いている姿が見える。
「……うん」
背負っているリュックを軽く背負い直すと、私は涼くんと並んで歩き出した。
「足元悪いから、気をつけて」
「うん。ありがとう」
差し出された手に自分の手を添えると、それをキュッと握りしめた涼くん。
その行為が、何だか凄く恥ずかしくて。
でも、凄く嬉しくてーー
私はいつまでも、そうしていたいと思った。
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