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奏多【回想】
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風に揺れて、サラサラと揺れる少し色素の薄い綺麗な髪。ピンク色のワンピースを着て、ちょこちょこと歩く女の子。
俺はその後ろ姿に向けてほんの少しだけ目を細めると、口元に薄く弧を描いてから口を開いた。
「ーー夢」
俺の声に反応して、こちらを振り返った夢。
その顔はとても愛らしく、まるで天使のよう。
垂れ目がちの大きな瞳は、俺を捉えると優しくその形を変える。
クスリと小さく声を漏らした夢は、「奏多くん、食材ありがとう」と言って、まるで花が咲いたかのような笑顔を見せた。
ーー3年でクラスが同じになった事がきっかけで、仲良くなった夢。
気が付けば、いつも側には夢がいた。
あれから2年経った今でも、変わらず側にいる夢。
気が付けば俺はーー夢を、好きになっていた。
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※※※
「ひゃっ……やぁぁー!」
少し前を歩いていた夢が、突然叫び声を上げて後ろへ下がると、そのままよろけて尻もちを着いた。
「いやぁー……っぅ……こわい゛ぃぃ……ぅぅぅっ……おうちっ……かえりたっ……いぃぃ……ぅ……こわっ……いよっ……ぉぉっ……ヴっ……こわいっ……ぃぃ~っ……」
我慢しきれなくなったのであろう夢が、転んだままその場で泣き始める。
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