雪道

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一年で一番、 頬が熱い日だ。 さくさくと軽快な音を立てながら、 だけど転ばぬように。 マフラーを風になびかせて、 鞄の紐をぎゅっと握って。 歩く、 歩く。 彼がそこに立っているのは、 多分、 八時二十五分まで。 朝礼が始まるのは八時半だから、 それが実質、 遅刻の最終防衛線。 毎日ご苦労なことだ。 こんな日くらい、 私と一緒に行ってくれてもいいのに。 は、 と吐く息が白い。 口から漏れた小さな不満は、 朝の冷たい空気の中に、 溶けていった。
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