雪のない道

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一年で一番、 忙しい日だ。 忙しいのは嫌いじゃない。 やりがいを感じる仕事なら、 だが。 校門前の雪かきはとうに終わっていた。 黒い制服に、 黒いマフラー。 まさに黒尽くめといった格好で白い雪をかくのは、 些か滑稽である。 まるで自分が悪の組織にでもなったような錯覚に陥るのである。 そして、 悪の組織俺は、 現在、 まったく面倒な仕事に従事させられているのである。 校門をくぐる、 浮き足立った少女たちへの機械的な質問の繰り返し。 ふと、 手元の時計に目をやった。 八時二十四分。 今、 マフラーをなびかせながら校門をくぐった彼女が最後だ。
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