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はじまりの章
その日の朝は、目覚し時計が鳴り響く音から
始まった。
2月14日、誰もが知っている。
そう今日はバレンタインデー。
俺にとっては、高校に入ってから3度目の
バレンタインデーを迎えるのだ。
俺の名は光太郎、18歳。
バレンタインデーにチョコを貰うなんて体験は
幼少時代、近所の幼馴染との間で定番のように
配っていた義理チョコを貰ったことを除けば、
ドラマのようなシチュエーションで本気チョコを
貰ったなんてことは、今までに一度もない。
小学校の学年が上がるにつれ、義理チョコさえも貰えなくなった。
まあ、今さら興味は無いって思ってはいるのだが、今年で高校も卒業。
進学はせずに就職コースへと向かう自分は、学生生活最後の人生に良い
思い出が欲しい!と思っているのだ。
男の性というものだろうか?
神様、今までバレンタインデーを迎える度に、皮肉ってみたりチョコを貰っている男子に、男がチョコなんて食うんじゃねえ!と罵ったりしてごめん。
自分が好きな男子を呼んで来いと言って来る女子に対して、言われたとおりに、相手を呼んで来るふりして、その女子を放置したまま家に帰ってきたりしてごめん。
正直、羨ましかったんさー!
これからは、いや、今日だけは正直に自分の心と向き合います。
だから、こんな俺に学生生活最後の記念になるような思い出をどうか残させてください。
よし!気合い入れて行ってみようか!今日という日が特別なものになると信じて。
通学前、自宅で髪型をちょっといじってみたり、
学ランのほこりを取ってみたり、見た目意識してる感じで最寄の駅に向かった。
通学は電車通学、今この瞬間から下校時間まで色んなシチュエーションになってもおかしくはないはずの状況が揃っている。
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