桃色の空気

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「やっと来たわね! さぁ、聞かせてもらうわよ!」  僕の前で仁王立ちしている彼女は文芸部の同期、実質僕以外で唯一の文芸部員である。  文学バカ。いつもテンションが高い。文学バカ。以上。 「まあマグロを使ったトリックは独創的だったと思う。そんな突飛なアイディア、僕は思いつけない」 「でしょ! 今回は自信作よ!」 「でもマグロが伏線ってことぐらいすぐに分かった。大体あんな場面で突然マグロの話がでてくるんだぞ? 不自然だろ」  僕はスクールバックから彼女の原稿を取り出した。ツッコミどころの多い作品で気づいたら付箋だらけになっている。彼女はそれをキラキラした目で見つめた。  これが僕らの日常。 お互いの書いた小説や作家の作品の感想を言い合う。僕が彼女のテンションについていけなくなるまでそれは続く。で、終わったら黙々と自身の文学に向き合うのだ。     
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