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「いいのよ。隠していたから驚くのも当然だわ。私の同級生、つまりあなたとも同級生ね。あなたも知っているんじゃないかしら」
言いながらスクールバックに手を突っ込む彼女。
「そうか」
こんなに文学に熱中している彼女が好きになる人はどんな変人なのか。本当はとても気になっているくせに、僕は興味がないといった感じに答えた。
「堅物だし、私のことをしょっちゅうからかうし、一つのことに熱中しすぎて周りが見えていなかったり、おまけにすっごい鈍感だし」
「そりゃひどい奴だ」
そんな奴にチョコレートなんて渡さなくていいのに。
「違うの!」
間髪入れず、彼女が叫んだ。
「でも、その人はなんだかんだ言って私の話をちゃんと聞いてくれるの。真剣に私の小説を読んでくれるの。で、悪いところは正直に言ってくれるの。他の人は面倒くさいからって適当にほめることしかしないわ。それにね、ひたむきに頑張る姿はとってもとってもカッコいいのよ……」
言いながら、彼女の顔はどんどん赤くなっていく。
恋愛経験ゼロの僕でも分かる。彼女はそいつのことを本気で好きなんだって。
僕は理由も分からず、腹がたった。
「何でそんなことを僕に言うんだよ。お前ののろけ話なんて聞きたくないね。さっさとその好きな人とやらに渡してこいよ。それとも渡す勇気すらでないのか?」
何だか今日は変だ。
部室にいつもと違う空気が流れている気がする。きっとこれのせいだ。
彼女の切なそうな顔も、僕が無性にイラつくのも、全部。
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