一月

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一月

 「月に叢雲花に風」  右手に持ったCDアルバムの、ジャケット裏に書かれているその言葉を、僕は読み上げた。  「ん?」  ソファに丸まって座る彼女は、声帯のみにわずかな力をかけて、声のような音を出した。  「6曲目。」  僕も、必要最低限の言葉を発して、CDジャケットの表の方を、軽く彼女の方へ向けた。  僕がつぶやいた言葉は、そのアルバムの6番目に収録されている曲の、曲名であった。 「いい曲だよ。」  彼女は先ほどよりきちんと声帯を動かし、少し、嬉しそうな声でそう言った。  僕は、このCDの内容がとても興味深く、ジャケット裏に羅列された曲のタイトルを読み続けていた。  読み方のわからない漢字が並んでいる。  6曲目のこのタイトルは、きちんと読めたし、綺麗な言葉だと思った。  「ふーん。確かに、いいね。」  「はは、聴いてないじゃない。」  「うん、じゃなくて、この言葉。」  僕は彼女の方に少し顔を向けてそう言った。  彼女はパステルカラーのもこもこしたパジャマを着て、あまりにも眠そうな顔をしている。  彼女は普段、モノトーンの洋服に赤いリップという姿が定番だが、パジャマだけはなぜかパステルカラーだった。     
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