一月

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 「そりゃあそうじゃない?だって、綺麗なものもいつまでも綺麗なわけじゃない、って・・・」  彼女は複雑な顔をし始めた。  「まあ、改めてそう言われると、そうじゃない気もしてきたけど・・・」  「ふふ、困らせちゃったね。ねえこのアルバム、聴いていい?」  「・・・うん、いいけど。今はやめとこ、寝るテンションじゃなくなる。」  「ふふ、テンションあがっちゃうんだ。」  僕は、そのアルバムを手に持って、彼女の隣に移動して座った。  僕はきっと、これ以上彼女には近づけない。  近づいてはいけない。  「マリが好きなのはどの曲?」  「そうねえ・・・全部好きだけど、やっぱり1曲目、8曲目もいいけど・・・6曲目も好きだし・・・」  彼女は先ほどとは打って変わって、楽しそうな声を出す。  「ふふ、好きなんだね、このバンド。」 「うん、特にこのアルバムはね、名作。」 「へええー、楽しみだな。明日聴こうね。」 「ああでもね、好き嫌いは、別れると思うのよ。」 「ふふ、知ってるよ、マリが好きなのは、万人受けしないもんね。」  それは、ヴィジュアル系ヘヴィメタルバンドのアルバムだった。  彼女の部屋には大きな本棚があって、CDや本や漫画、それからDVDなんかが詰め込まれている。  そしてそれは、あまりに混沌としている。     
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