一月

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 ヴィジュアル系バンドのCDが並ぶ横には、オシャレなカフェでかかっていそうなジャズアルバムもあるし、ミュージカル映画のサントラもある。  本の類は、限りなくくだらないギャグ漫画もあれば精神医学の解説書もあり、血なまぐさいミステリー小説の横にはいわゆるBLと呼ばれるジャンルの漫画が並んでいる。  そしてDVD。アニメに韓流、ミニシアター系の映画に、宝塚歌劇団。  さらにややこしいことには、そのCDや本の上に、かわいらしい犬や猫のぬいぐるみがちょこんと置いてあったりもするのだ。  僕は、この本棚がとても好きだ。  「できれば、歌詞を見ながら、かみしめて聴いてね。」  「ふふふ、わかりました。」  歌詞カードにも、よくわからない漢字で紡がれた日本語らしきものが羅列されているが、漢字とは不思議なもので、雰囲気は、見ただけで伝わってくる。  不変のものなどない。   人は、世界は変わっていく。  変わっていくのが自然の摂理であり、抵抗しても無駄なのだ。  変わらないことを望もうとも、変わることを切望しようとも、きっと、いつかは変わってい く。  「僕もね、6曲目は、好きだと思うよ。」  僕はこのタイトルの意味に気づいたときから、そう思っていた。  「ずいぶん気に入ったのね、タイトルだけで。」  「ふふ、うん、最初はね、語感がいいと思ったんだ。」     
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