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「ああ、語感で言ったの。」
「それに言葉がね、綺麗な言葉しか使われてないじゃない。」
「まあ、そうね。」
「それに意味もね。」
僕には、次の言葉を出すために、一瞬の時間が必要だった。
彼女は僕の顔を覗き込むようにしてくる。
彼女は、「せつない」と言った。
「嫌いじゃないよ、僕は。」
僕はまっすぐ前を見ながらそう言った。
彼女の方を見ると、なんだか少し不安そうな顔をしていたので、僕は少し笑うことにした。
彼女はすぐに僕から目をそらして、まじめな顔で、豆乳を飲んだ。
「そっか。じゃあそれを聴くのは明日のお楽しみにして、今日は寝よっか。」
「うん、寝よう。明日も仕事だもんね。」
彼女はマグカップを片付けて寝室に行った。
僕のための布団を持ってきてくれるのだろう。
僕はその間に洗面所へ行って歯磨きをする。
2つ並んだ歯ブラシを見るのはあまり好きではない。
嬉しい、悲しい、寂しい、恨み、迷い、過去、未来。
いろんな言葉が津波のように押し寄せてきて、結局まとまらないからだ。
「あふぃがと。」
歯磨きをしながらお礼を言う。
「どういたしまして。」
僕が布団のところに行くと、彼女はすぐに電気を消そうとした。
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