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俺とアイツは、『サイトウさん』繋がりでセットにされちまった。からかわれて怒ってるのかと、休み時間に声をかけてみたら、何とバラエティやお笑いを殆ど観ないから、件の『サイトウさん』を知らないのだと言う。今どき、珍しい奴だな。ちょっと驚きながら、俺は昼休みに屋上で購買のパンをパクつきながら、教えてやった。
「トレンディエンジェル、本当に知らないのか?」
「知らない。アイドルか何かか?」
俺は思わず焼きそばパンを噴きそうになって、口を押さえた。確かに、名前だけなら、可愛いアイドルグループみたいだもんな。肩を震わせる俺を、サイトウは不思議そうに見てる。飲み込んで俺は、あははと声を漏らした。
「違うよ。お笑いコンビ。禿げネタとデブネタが鉄板の、M-1王者だ」
「芸人なのに、格闘技もするのか?」
その疑問には、一瞬クエスチョンマークが瞬いた。五秒あって、思い当たる。
「……ひょっとして、K-1と間違えてるか?」
「ん? K-1だろ」
「違う違う。M-1。Mは、漫才のM。つまり、漫才で一番面白いコンビってこと」
俺は呆れを通り越して、やっぱり笑いながら教えてやった。コイツ、こんな調子でダチ出来るのかな。ダブルサイトウのよしみで、俺がダチ一号って事にしとくか。俺は購買のパンだったけど、アキラは小綺麗な色味の弁当を啄んでた。よく見ると、お握りがパンダ柄になってる。
「ところでサイトウの母ちゃんって、高校にもなって、キャラ弁なのな。恥ずかしくねぇの?」
「いや、弁当は毎日自分で作ってる」
何処まで規格外なんだ。
「えっ、そのパンダ作ったのか?」
「そうだよ。サイトウは、いつもパン?」
「うん。……てゆっか、サイトウ同士だから、何か変な感じだな。俺、リュウイチ。みんなからはリュウって呼ばれてる」
「じゃあ、僕もリュウって呼ぶ。僕のことは、アキラでいいよ」
「ああ、その方がしっくりくるな。改めてよろしく、アキラ」
「うん。よろしく、リュウ」
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