王子様だって一人のお姫様になれる

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*** (どうしてこんなことになってるの?!)  朝希は広大のキスに力が抜けたままの自分を歯がゆく思いながら真樹の方を見た。  真樹は頬を押さえたままがっくりと肩を落とし、 「そうだったんだ……。ごめんね、前田さん」  とか細く言って、後ろを向いた。そして可哀想なほどよろよろとした足取りで去っていく。 「違う! 謝るのは佐藤君じゃないよ! ごめんなさい! 私が全部悪いの! 私こそ傷つけてごめん! 本当にごめんなさい!」  朝希の泣きそうな声が響く。真樹は振り向かずに手を上げただけだった。 (佐藤君……。いい人なのに、私、何てことしちゃったんだろう。ごめんなさい、佐藤君。……それに比べて……)  朝希は怒りに肩を震わせながら、 「広大、あんた、何なのよ?! こんなの酷すぎる! なんでこんなこと!?」  と広大を睨むと、まじめな広大の目があった。その目からは迷いや苛立ちが消えていた。 「お前の隣は、藤木でも佐藤でもなくて俺じゃなきゃ駄目なんだよ。俺と付き合え」  命令口調の広大の言葉。それでも広大が本気なのは伝わってきた。 「はい」  と頷いてしまう自分を朝希は情けなく思った。 「よしっ! そうと決まったらこの前の続きを……」  そう言って朝希をお姫様抱っこした広大の頬を朝希は思いっきり殴った。 「手順てもんが、あんたには解らんのかー!」 「いってーな!」 「広大。私、佐藤君、傷つけちゃったよ」  もともと自分がちゃんと断ればよかったのだ、と朝希はうなだれた。 「俺もかなり酷いことした」  珍しくまじめに広大が言った。 「本当だよ」  それでも、と朝希は思って広大にしがみつく。 「広大が好きだから仕方ない。本当、馬鹿で酷い私」  朝希の言葉に、広大はまた朝希にキスをした。 「ちょっと、こんなとろでやめてよ」  朝希は嬉しさと恥ずかしさに体温が上がるのを感じながら、広大の唇から逃げようとする。 「俺の部屋ならいいの?」  広大の唇が首筋に下りて、 「ひゃっ」  力が抜けそうになるのを朝希は耐えた。 「だから! そう言う問題じゃなくて!」  言った朝希にまた広大がついばむようなキスをしてきた。 「佐藤には悪いけど、朝希には俺じゃねーとな」  朝希は、 「広大には私じゃないとね」  と答えた。  罪意識は消えないけど、それでも嬉しさが勝ってしまった。  二人は額をくっつけてくすりと笑い合った。 「浮気したら許さないからっ」と言う朝希に、「それは絶対無い」とまじめに広大。  仕方ない今回は信じてやろう、と朝希は思った。それに、信じてもいいという予感があった。
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