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「きゃー、朝希さーん!」
「素敵でしたー!」
ファンの女子をうまくかわしながら、朝希が梨呼のもとへやって来た。
「来てくれたんだ! ありがと!」
「格好よかったよ、朝希ちゃん。一番輝いて見えた」
興奮気味の梨呼。朝希はその梨呼の後ろを見て意外そうな顔をした。
「男バスももう来てたの? 試合見た?」
「おうよ、今日もいい動きだったな、朝希」
広大に言われた朝希は、本当に嬉しそうな顔になった。
「ありがと」
「もち、俺らのも見てくんだろ?」
「いい? 梨呼」
「うん」
「じゃあ、見させていただきます、竹田部長。試合のときぐらいは部長らしいとこ見せてよね」
と言った朝希に、
「お前より歓声とってやるさ」
誰にものを言ってるんだとばかりに広大。
「じゃ、そろそろ準備があるから。また後で、前田、リコちゃん」
カケルがそう言い、広大たちは去っていった。
「リコちゃん?」
「え?」
「羽柴、梨呼のことそう呼んでたよね?」
「あ! う、うん」
「めっずらしー! 何か進展とかあったりして」
「そんなのないよ」
本当に何もないのに、なぜか赤くなりながら否定する梨呼。
「あ、でも、ハシバ君がコートがよく見える場所に押し出してくれたの。それまで全然見えなかったんだけど」
「へーえ」
ま、羽柴は優しいからな、と朝希は納得する。
「そしたらね、なんか、ハシバ君は他の男子と違う気がした」
えっ? と朝希が驚いたように梨呼を見た。
「ハシバ君が後ろにいると背中が熱くなって……。でもね、怖いわけじゃなくて、なんだか恥ずかしいような、暖かくなるような、そんな感じがしたの」
(それに名前で呼ばれるのがなんだかくすぐったかった。変なの)
頬を薔薇色に染めて言った梨呼に、
「! そっかあ!」
朝希が優しく笑って、梨呼の頭をポンポンと撫でた。梨呼はよくは分からないけど、なんだか嬉しかった。
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