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「広大! 広大! 広大!」
もの凄いコールだ。西高の女子のも混じっていた。
「凄い。竹田君て人気あるんだね」
「んー、だからライバル多くて困るのよね」
朝希は苦笑している。
確かに広大のプレーには人を魅了する何かがあった。速いドリブル。絶妙なフェイント。空中でディフェンスをかわすフックシュートに、豪快なダンク。
「ちょっとだけ竹田君、見直した。バスケほんとに上手なんだね」
梨呼の言葉に、朝希は自分が褒められたかのように嬉しそうに笑った。
「試合中の広大はいいでしょ? まあ、練習してるってのもあるけど、センスがあるのよね」
その朝希の言葉に、思わず梨呼はくすくすと笑った。
「同じこと朝希ちゃんに対して竹田君言ってたよ」
「え、本当?」
朝希は頬を赤く染めて、嬉しそうに、
「そっか」
と言った。そして、
「羽柴もいい選手よ。見て」
と梨呼に言った。
判っていた。
梨呼は広大を見る以上にカケルを見ていた。
彼は地味ではあるけれど、いいサポートをしていたし、相手から離れないディフェンス、それから、 フリーになったときのスリーポイントシュートがすばらしかった。それはまるで、始めからシュートがきまることが決まっているかのように綺麗な弧を描き、網をくぐった。時が止まったかのような静かで美しいシュートフォームに、梨呼は魅入っていた。
カケルの普段静かな瞳に、試合中宿る強い光にもドキドキさせられた。
「うん。格好いいね、ハシバ君……」
梨呼の口から自然ともれた言葉に、朝希はそっと梨呼を見た。
カケルの姿を梨呼の目が追っている。その目はまさに恋をしている目だと朝希は思った。
朝希は強く願った。梨呼の恋はうまくいきますように。自分のような苦しい想いはしませんように、と。
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