25人が本棚に入れています
本棚に追加
***
ポフッとベッドに倒れこんで梨呼は天井を見つめた。
カケルのシュートフォームが甦る。本当に綺麗だった。目をつむる。心臓がドキドキしてなかなか眠れない。
試合の後、朝希は広大と反省会をするからといって、二人で消えてしまった。結果的に梨呼はカケルと一緒に帰ることになった。
カケルは梨呼との距離を保って歩いてくれ、
「退屈じゃなかった? バスケの試合」
と、会話ができないでいる梨呼に気を使って声をかけてくれた。
梨呼は珍しく自然に言葉を返すことができた。
「あのね、小学生のとき、私もバスケをしてたんです。背がないから中学からは諦めちゃったけど……。でも今でもバスケが好きなんで、見てて面白かったです」
カケルは意外そうな顔をして、
「そうだったんだね」
と言った。
「そうだ、前田、凄かったでしょ? 前田なら男バスでもやっていけそうなくらいだよ」
「はい。朝希ちゃん、いつもとっても格好いいです。え、えっと、羽柴君、竹田君も素敵でしたよ」
本人を前に言うのはさすがに恥ずかしく、顔を赤らめて梨呼は言った。
いつもだったらできないことだ。だが、そのときは思ったことを伝えたいと言う気持ちが勝っていた。
「え? 広大はわかるけど、俺も?」
大きな背をしてうろたえるカケルを可愛いいなと梨呼は思った。
「はい。シュートフォームがとても綺麗ですね」
「うわー、嬉しいなあ。ありがとう!」
カケルは本当に嬉しそうに笑った。
カケルは、近くだからとわざわざ梨呼の家の前まで送ってくれた。
「また明日ね」
と言って去っていくカケルの後ろ姿を梨呼はぼうっとしながら見送ったのだった。
「また明日ね、かあ……」
ベッドの上でカケルの言葉を呟いて、梨呼は幸せな気持ちになった。
「また明日ね」
もういないカケルに言うように梨呼は言って、もう一度目を閉じた。自然と口元に笑みが浮かぶ。
(今日はいい夢が見れそう)
ほどなく梨呼は眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!