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「あのっ」
「何? そんなに緊張しなくていいよ。と言っても難しいか。ごめんね。えっと、どうしたの?」
「あのっ、『カケル』ってどんな字書くんですか?」
とっさに出た言葉はこれだった。
「え? ああ、俺の名前? 飛翔の翔で、かけると呼びます。ちょっと珍しいかもね」
「飛翔の翔……」
なんだか小さな自分なんかに気付かず、翔が飛んで行ってしまうような想像をして、梨呼は悲しくなった。
飛んで行っちゃ嫌だ。置いて行っちゃ嫌だ。ずっとそばにいて欲しい。
そう思っている自分に梨呼は驚いた。
この気持ちは何だろう。
この気持ちは……!
今なら朝希の気持ちが解るような気がする。
こういうことなんだ。
「リコちゃんは」
そう言って翔が後ろを振り返る。梨呼の大きな目には涙が溜まって溢れそうになっていた。翔の目が見開かれる。
「リ、リコちゃん?」
「あの、わ、私、私……」
「う、うん?」
自分でも信じられなかった。告白するときがこんなに突然やってくるなんて。
でも、置いていかれたくない。一緒にいたい。ずっと自分と一緒にいて欲しい! その想いに梨呼は勝てなかった。
「ハシバ君のこと好きになったみたいです!」
耳まで真っ赤なり、肩を震わせながら、梨呼は口にしていた。
次の瞬間、バサバサと翔の手からプリントが落ちた。
「あ、まずい。えっと。あの」
そう言う翔も耳まで真っ赤になっていた。
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