できれば君の特別になりたい

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(どうせ、俺は帰宅部で、地味な三年間を送ってましたよ) と思っていると、女子たちと写真を撮り合っていた孝子と目が合った。孝子は女子たちに何か告げると、治雪を見てにっこり笑って近づいてきた。 (この笑顔も見納めかもしれない。よく見ておこう)  なんて思っていると、孝子が治雪のもとへたどり着く前に後ろから肩を叩かれた。  どうせ、佐々木が自慢でもしに来たんだろうと思いながら振り返る。するとなんとなく見覚えのある女子が二人立っていた。 「あのぅ、覚えてますか? 一年のとき、一緒のクラスだったんですけど」 「そのときから、ずっと好きでした。ボタンください」  二人から言われ、目を白黒させていると、逆側の肩を誰かが叩いた。  そして。 「治雪君、第二ボタンはとっておいてね。約束でしょ?」 (え?)  治雪は眩暈を覚えた。もう何がなんだかわからない。  しかし、その声は間違いなく孝子のものであった。 (『治雪君』だって?  それに、第二ボタン!? ええ?!)  孝子はにっこり笑っている。 「昨日電話で約束したじゃない?」 (してません) 「えーっと。……。 ごめん、第二ボタンはそういうことなんだ。他のでよければ……」 「それでもいいです。ください」 と言う二人にボタンを渡して孝子を見た。 「はい、『孝子』さん」  孝子さん、に力を入れて言いながら、第二ボタンを孝子に渡す。  すると、孝子は本当に嬉しそうに笑った。 「ありがとう! 欲しかったんだ、治雪君の第二ボタン」 「……」  女心は本当に解らない。多分一生解らないだろう。  そして、桜散る四月。風も暖かくなり、あたりの気配が春を告げる中、 「治雪くーん、こっち!」  スーツ姿の「彼女」、孝子に手を上げて治雪はK大学の門をくぐった。 
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